性格にも相性がある?

「自分に合う人ってどういう人なの?」

これは恋愛したいと思っている人なら誰でも知りたがる事だ。

外見、声、職業、経済力、対人関係など、恋人を選ぶ際の条件は色々あるが、長く、そして上手く付き合うためには、何よりも性格が合うことが重要だと考える人は多い。

だからだろうか、診療室でも診療室の外でもよくこんな質問を受ける。

「性格の相性ってありますか?」
「どんな性格同士で付き合えば上手くいきますか?」

「自分にはどんなタイプの人が合うのかが分かる、MBTIのような心理テストはないんですか?」

そんな質問を受ける度、僕は彼らをガッカリさせる返答をする。

「そんなものありませんよ」と。

性格をいくつかに分類して、それぞれの相性をチェックできたらどんなに良いか…と考えるかもしれないが、

性格で相性を診断するのはリスクが高いため、精神科医として薦められない。

なぜなら、性格検査も時間を置いて再度行うと同じ結果にならない場合が多いように、

性格は様々な経験を通して、いくらでも変わる可能性があるからだ。

だが、多くの人は「自分はこういう性格で、あなたはこういう性格」だと簡単に決めつけ、変化の可能性を考えない。

性格は変わるものだから、性格を通して自分と相性の良い人を探そうとするのは危険なのだ。

 

性格と気質

だとすれば、誰と付き合えば幸せな恋愛をすることができるのだろうか?

その答えは気質にある。

気質とは生まれ持ったその人の特性で、気質と周りの環境が合わさって性格を形成する。

よく「気質」「性格」を混同して使うことがあるが、性格は出会った人との様々な経験を通していくらでも変わる可能性がある反面、気質はほぼ変わることがない。

そして気質は、恋愛を含む人生全般に影響を及ぼす。

アメリカの精神医学博士クロニンジャーは気質を新奇性探究、損害回避、報酬依存、固執の4つに分類した。

新奇性探究が高い人は常に新しい事を探し求める。
適度な新奇性探究は人生を豊かにするが、あまりにも高すぎる場合はすぐに飽きてしまう傾向が強く、恋愛においても熱しやすく冷めやすい。

損害回避が高い人は変化を恐れる。
誰かと親しくなりたくても、失敗を想像してしまうため、なかなか恋愛を始められない。
また良くない恋愛をしていてもなかなか断ち切れず、ズルズルと付き合ってしまいがち。

報酬依存が高いと、他人の視線を過剰に気にする。
だが他人の感情に敏感なため、円満な人間関係を築ける。

固執が高いと、真面目で根気よく乗り越える能力には優れているが、完璧主義の傾向が強く、頑固になりがち。

そして、この気質によって自分に合った仕事が分かる。

新奇性探究が高く、固執が低い人には単純作業は苦痛でしかなく、

損害回避が高く、報酬依存が低い人が不特定多数を相手にするサービス業に携わると、地獄のような日々を過ごすことになるといったように、気質によって合う合わないが決まるのだ。

これは恋愛でも同じだ。

新奇性探究が高く、固執が低い人には刺激が少なく落ち着いた恋愛は最悪の恋愛かもしれないが、反対の気質を持った人には最高の恋愛かもしれない。

だから、自分がどんな気質を持っていて、どんな気質を持った人が好きなのかを正確に知ることが重要なのだ。

相手が生まれながらに持っている気質を、自分の望み通りに変えることはできないから。

 

違いを認めることから

気質は変わらない特性だという点では重要な参考資料になるが、気質だけで相手を選ぶことはできない。

精神科医として、僕が皆さんに恋人選びをする時に心に留めてほしいことは、

違いを認め、相手に合わせる準備ができている人と付き合うべきだという事だ。

相手と自分の違いを認め、そこから生まれる摩擦を減らすために努力できる人。

相手が変わる事を強要するのではなく、自分が努力して変われる人。

果たして自分はそれができるだろうか?
お互いの違いを認められず、相手を非難してばかりではいなかっただろうか?

皆さんが、まずは自分自身を振り返り、お互い相手に合わせる努力ができる、そんな幸せな恋愛ができる事を望んでいる。


<訳あり恋愛>シリーズ
精神医学の専門医が関係を築く中で深刻な問題を作り出す恋愛心理について解説します。様々なエピソードの中に、きっとあなたに必要な「気づき」があるはずです。
(編集者:キリン女子)



筆者:ドクターK

性格とは変わるもの。変わっていく自分を認めることも大事です。