女性へのDV

今日はちょっと重いテーマを扱おうと思います。

DV(ドメスティックバイオレンス)は親密な関係にあるパートナーから受ける暴力のことを言います。ここでいう暴力とは、身体的、精神的、性的、経済的等多方面に及びます。

2015年の内閣府の調査で、結婚している女性の4人に一人、交際中の女性5人に一人がDVの被害にあっていると報告されました。

アメリカでも大学内でのデートDVが問題視され、近年これと関連した研究が活発に行われています。大学で望まない性的経験をした女性が20%近くに上るほど、問題が深刻化したからです。(Kerbs, Lindquist, Warner, Fisher & Martin, 2009)

そこで今日はこれに関連した研究を紹介します。

 

メディアの消費習慣

インディアナ大学メディア学科のポール・ライト教授は、メディアの消費習慣が女性へのDVについてのとらえ方にどんな影響を及ぼすのかについての研究を行いました。

ライト教授は187名の男子大学生を実験の対象とし、アンケートを実施しました。

アンケートには大きく分けて5つの領域の項目を含んでいました。一つずつ詳しく見てみましょう。

#1. AVの消費

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AVは女性を性的欲求の対象とした代表的なメディアです。

#2. 男性雑誌の消費

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MAXIMやEsquireのような男性誌では男性を主体とし、女性を性的対象とした記事が多く掲載されています。

#3. リアリティ番組の視聴

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日本のリアリティ番組とは若干差がありますが、アメリカのJersey ShoreやThe Real Worldのようなリアリティ番組は、視聴率アップのために、女性のセクシーショットを売りにしている場合が多く見られます。

#4. 女性を性的対象と認識
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参加者に女性を一人の人間として見るか、それとも性的対象としか見ないかについての認識調査を行いました。

例えば、「きれいな女性しか魅力的に思えない」 とか「セックスできる女性がより魅力的だ」 のような項目でした。

#5. 女性へのDVについての見方
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女性へのDVに対してどの程度までなら「これくらい問題ない」と考えるかを調査しました。

例えば、
「女性は乱暴に振る舞う男性に性的魅力を感じる」とか、「女性はセックスしたいと思っていても、表向きは反対のことを言うので、男性が無理やりにでもするのを望んでいることが多い」 といった項目でした。

ライト教授はこの5つの項目とDVの間にどんな関係があるか分析しました。

 

態度の変化

考えてみれば、先ほど述べたメディアには実際、女性に殴る蹴る等の暴力を振るうシーンはほとんど登場しません。

ライト教授はこのように直接的な暴力シーンがないメディアが女性へのDVについての態度にどのように影響を与えるのか気になりました。

結果を見てみましょう。

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まず、AV、男性誌、リアリティ番組の消費は女性を性的対象と認識しやすくするという結果が出ました。

そして、

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女性を性的対象としか見ない人であればあるほど、これくらいならDVと考えない可能性が高かったのです。

すなわち、メディアに女性への暴力シーンがなくても、女性を「人」としてではなく「欲求の対象」と見ると、ある程度のDVも問題ないと考えるようになるのです。

 

AVを見たらDVするようになる??

ポール・ライト教授の研究は直接的な女性への暴力シーンがなくても、女性を性的対象として扱うメディアを見るだけで、そのような 消費習慣を通して女性の性的対象化、さらには女性へのDVに対する態度に影響を与える可能性があるということを示しています。

もちろんAVを見たり、男性誌を見る=DVをする!!と言った極端な結論を下すのは正しくありません。
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この影響はあくまで間接的なことで、この研究もまた実際の行動ではなく態度についての話だったからです。

しかしながら、メディアを通して接する女性に対する見方が、知らないうちに男性(そして女性)に影響を与えていることは事実です。

今すぐに「見ちゃダメ!」と言うよりは、メディアがこのような影響を及ぼす可能性があるということを認識することだけでも意味があると思います。

問題がどこでどのように発生するかを一つずつ知っていくことが、問題解決の出発地点なのですから。