男女の性欲
一般的に女性よりも男性の方が、性欲が強いと言いますよね。
本当にそうでしょうか?
中には、男性の方が性欲が強いのはあまりにも当たり前すぎて、科学的に研究する必要があるのかと言う人もいれば、長年の先入観でそう思い込んでいるだけで、女性も男性と同じくらいの性欲は持っていると言う人もいます。
本当のところはどうなのでしょうか?
ケース・ウェスタン・リザーブ大学心理学科のロイ・バウマイスター教授もこのことについて関心を持ち、性欲に関連した論文をくまなく探しました。
彼はJournal of Sex Researchに掲載された1965年から現在までのすべての論文と、The Archives of Sexual Behaviorに掲載された1990年から現在までのすべての論文、そして男女の性欲のついて扱ったほぼすべての論文を検索し、整理しました。
そして、性欲を構成する要素を9つの項目に分け、男女がどう違うのか調査を行いました。
それでは、今からその結果を皆さんにお伝えします。
#1. セックスについて考える頻度
性欲が強ければ、当然セックスについてより多く、より頻繁に、より多様に考えるでしょう。
これと関連した研究を整理した結果は以下の通りです。
- 毎日セックスについて考える: 男性 50%、女性 20% (Laumann, Gagnon, Michael, and Michaels, 1994)
- 無意識的に1週間に3、4回以上性的欲求を感じる: 男性 91%、女性 52% (Beck, Bozman, and Qualtrough, 1991)
- 1日の平均性的衝動回数: 男性 4.75回、女性 2回 (Jones and Barlow, 1990)
- 性的衝動を抑圧 (例: セックスについてもう少し考えないようにしたい、セックスについて想像したり性的行動を抑えるため努力している): 男性 > 女性 (Vanwesenbeeck, Bekker, and van Lenning, 1998)
- 性的空想: 男性が女性よりも頻繁に、多様に考える(Leitenberg and Henning, 1995)
#2. 理想のセックス頻度
性欲が強ければ、理想のセックス頻度も高いはずです。
男女の理想のセックス頻度についての研究を整理した結果です。
- 結婚して20年になる夫婦の理想セックス頻度: 夫が妻よりも50%多い (Ard, 1977)
- 今よりももっとセックスの回数を増やしたいと思っている夫婦の割合: 夫 60%、妻32% (Brown and Auerback, 1981)
- セックスはしたいができないでいる人: 男性が94% (McCabe, 1987)
- 1週間に3回以上セックスをする同性愛カップル: ゲイ 60%、レズビアン 30% (Blumstein and Schwartz, 1983)
#3. 理想の相手の数
性欲が強ければ、より多くの相手とセックスをしたいと考えるでしょう、
理想の相手の数の男女の違いを見てみましょう。
- 今後2年間のうちに、何人とセックスをしたいか: 男性 8名、 女性1名(Buss and Schmitt, 1993)
- 一生のうちに何人とセックスをしたいか: 女性平均 2.7名、 男性平均64名(えっ?) (Miller and Fishkin, 1997)
- 浮気の確率: 男性 > 女性 (Spanier and Margolis, 1983)
- 同性愛者の浮気の確率: ゲイ 82%、レズビアン28% (Blumstein and Schwartz, 1983)
#4. 自慰行為(オナニー・マスターベーション)
性欲が強ければ、自慰行為を通して欲求を解決しようとするでしょう。
男女の自慰行為のパターンも比較してみました。
- 1週間に1回以上自慰をする割合: 男性 45%、女性 15% (Jones and Barlow, 1990)
- 自慰行為をしたことがない人: 女性 39%、男性 11% (Arafat and Cotton, 1974)
- 60歳以上の自慰をする割合: 男性 > 女性 (Bergstrom-Walan & Nielsen, 1990)
この結果に対して、
「社会が女性に対しては自慰の方法を教えず、女性が自慰をすることに対する抑圧も強いため、このような結果が出たのではないか?」
といった意見が出ました。
この意見に対して、バウマイスター教授はこのように答えています。
「自慰をすることに対する抑圧は男性に対してもあり、これまでも自慰についての直接的な警告は主に男性を対象に行われてきました。」
「女性に自慰をする方法を教えないということ自体は事実かもしれませんが、だからと言って男性にだけ教えたから、男性がより自慰をするというわけではありません。」
「研究によれば、男性であれ女性であれ、50%以上の人が教えられずとも自分自身で自慰の方法を覚えたと答えました。自慰の方法を覚えるのは、そこまで難しいことではないということでしょう。」
(Arafat and Cotton, 1974)
「自慰行為をしたいと思えば、誰でも自分で方法を覚えることができるんです。」
また違った意見もありました。
「女性が自慰行為をすることに対して、社会が罪の意識を植え付けているから、そうなのではないですか?」
この意見に対して教授は以下のように答えました。
「研究によれば、自慰行為後に罪悪感を感じる割合は男性13%、女性10%です。むしろ男性の方が高いのです。」
「それに、自慰をしない女性に理由を尋ねてみると、76%が別にしたくないからしないと答えました。罪の意識というのは根拠のない主張でしょう。」
#5. セックスをしない状況
性欲が強ければ、できるだけセックスをしない状況を避けようとするでしょう。
これについての研究を見てみましょう。
- セックスパターン:女性の場合、交際中はセックスを楽しみ、別れたら性的活動は中断。また新しい恋人ができたら再開。男性の場合、彼女がいようがいまいが関係なく、性的活動を持続的に行う (Kinsey et al, 1953)
- セックスをしようとしない理由1位: 男性は断られることへの恐れ、女性はしたくないから (Leigh, 1989)
- カトリックの聖職者のうち、性的活動をする割合: 男性62%、女性49% (Murphy, 1992)
#6. 多様な性的活動
性欲が強ければ可能な限り様々な性的活動を行ったり試みたりするでしょう。
それについての研究です。
- オーラルセックスを好む割合: 男性 45%、女性 29% (Laumann et al, 1994)
- オーラルセックスをすることを好む割合: 男性 34%、女性 17% (Laumann et al, 1994)
- 女性は自ら望んでするというよりも、してあげないといけないからしている可能性が高い
#7. 成人向け産業
性欲が強ければ、その性欲を満たすための成人向け産業も充実しているはずです。
これについての研究です。
- 歴史的に、男性を対象にした売春は多くの文化圏で存在、女性対象の売春はほぼなかった (Elias, Bullough, Elias, & Brewer, 1998)
- 成人向け雑誌やアダルトビデオ購入に使う金額: 男性 > 女性 (Laumann et al, 1994)
- 性具(大人のおもちゃ)購入に使う金額: 男性 > 女性 (女性用性具であるバイブレーションが、男性向けのどの性具よりも満足感があるという…) (C.M. Davis, Blank, Lin, & Bonillas, 1996)
- ワンナイト、AV、売春、浮気に対する態度: 男性が女性よりも好意的 (Oliver & Hyde, 1993)
この結果に対して、次のような意見がありました。
「AVの多くが男性向けだから、女性は見ないのではないですか?」
この意見に対して、バウマイスター教授はこのように答えました。
「研究によれば、実際にAVを見た時に感じる性的刺激は男性も女性も大きく差がないと言います。見れば刺激を感じますが、わざわざ探してまで見たいとは思わないのでしょう。」
(Fisher & Byrne, 1978)
「加えて、女性向けのAVがないから見ないのであれば、すでに誰かがその市場をターゲットにしたAVを作って、数百ドル稼いでいるでしょう。」
「実際に、成人向け産業では、女性をターゲットにした試みを行ってきましたが、失敗に終わっています。プレイガール雑誌も登場しましたが全く人気が出ず、VIVA!という雑誌は3年で廃刊になりました。」
(Abramson & Pinkerton, 1995)
「女性のヌード写真を売って儲けている雑誌はとても多いですが、男性のヌード写真を売って儲けるという市場自体が存在しません。」
(最近は女性向けのAV市場も少し開けてきていますが。。。)
#8. 性欲があまりない人の割合
性欲が強いのであれば、相対的に性欲がない人の割合も低いはずです。
これについてに研究を見てみましょう。
- 性的欲求低下障害(HSDD) の人の割合: 女性 81%、男性 19% (Segraves & Segraves, 1991)
- カップル間でセックスをするかしないかで揉める時は、大部分が男性がしようと言う側 (Byer & Lewis, 1988)
- 一度もセックスをしたいと思ったことがない人: 女性 19%、男性 2% (Carroll, Volk, and Hyde, 1985)
#9. 自分自身が感じる性欲
性欲が強ければ、自分自身も性欲が強いと感じるのだと言います。
これについての研究結果です。
- 青年を対象とした研究では、男性が女性よりも自分自身を性欲が強いと感じている (Beck et al, 1991)
- 中年を対象とした研究では、男性が女性よりも自分自身を性欲が強いと感じている (Pfeiffer, Verwoerdt, and Davis, 1972)
- 老年を対象とした研究では、男性が女性よりも自分自身を性欲が強いと感じている (Bretschneider and McCoy, 1988)
結論
男性は女性より性欲が強い!!
もちろん、平均的にそうだということで、すべての男性が女性よりも性欲が強いというわけではありません。もちろん男性より性欲が強い女性もいます。
しかし、確率的に男性が女性よりも性欲が強い可能性が高いということです。
では、なぜこのような違いが表れるのかについては、次の記事で紹介します!
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